「ヘバーデン結節」とは

手の指先「第一関節」が太くなったり、変形する「ヘバーデン結節」

あなたの指先が太くなったり、曲がったり、痛んだりしていませんか?

手の指先(第一関節)が「太くなったり」「曲がったり」「痛んだり」するのは、「ヘバーデン結節」という重大な病気です。何が重大なのか? それは、足やひざ、股関節、腰、背骨、首を変形させ、なかなか治らない慢性痛やひどい変形、疲労骨折(いつの間にか骨折)などの隠れた原因になっているからです。そして、このことに気付いていないことが大問題なのです。

「ヘバーデン結節」は、こんなに多いから 『国民病』と呼べる!

60歳以降の女性では、4人に1人程の割合で「ヘバーデン結節」が見られる。

「ヘバーデン結節」とは

手の指「第一関節」(爪のすぐ下の関節)の背面が太く変形したり、コブのような骨の隆起が現れたりする病気です。また、最初に、「ミューカスシスト」と呼ばれる水ぶくれから始まることもあります。指を使った後、関節が赤く腫れ、痛みと熱感が続き、生活に大きな支障をきたしてしまいます。
最初は1本の指から始まりますが、放置しておくと10年~15年ほどで両手の指のすべてに発症してしまうパターンが非常に多いのです。
また、多くの場合、手首の親指側にある「CM関節」に痛みや出っ張りを伴う「CM関節症」を併発するのも特徴です。稀な例ですが、手首の背側に滑液と脂肪のかたまりである「ガングリオン」が現れることもあります。


  • 「ヘバーデン結節」が小指に起こっている状態。1本の指から始まり、気付きづらい。

  • 「ヘバーデン結節」が複数の指に広がってくる進行性。

  • 「ヘバーデン結節」で全部の指が変形。中指は横に曲がって時々痛む。一目が気になる。

その患者数は、もはや「国民病」レベル

「ヘバーデン結節」は、30代の女性でも見られますが、圧倒的に多いのは40代以降の女性。
特に、60代以降の女性では4人に1人の割合で見られることから、「国民病」といっても過言ではありません。それほど身近な病気にもかかわらず、存在自体があまりに知られていないのが実情です。
指が腫れ、痛くなるという症状から、免疫が骨や軟骨を壊してしまう「関節リウマチ」と混同されがちですが、まったく別の病気です。

  • 40代女性

    ヘバーデン結節で手の第1関節が変形。ヘバーデン結節が原因となるひざの痛みや肩こり、頭痛、めまい、耳鳴りの不調を抱えている。

  • 50代女性

    ヘバーデン結節で手の第1関節が変形。ヘバーデン結節が原因となる外反母趾、ひざの痛みを訴えている。

  • 60代女性

    ヘバーデン結節で手の第1関節が変形。ヘバーデン結節が原因となる外反母趾や足の痛みとひどい肩こりを訴える。

  • 70代女性

    ヘバーデン結節で手の第1関節が変形。ヘバーデン結節が原因となるひどい外反母趾歩行が困難と訴える。

いろんな関節に痛みや変形、疲労骨折(いつの間にか骨折)を起こしているが見落とされている

さらに問題なのは、「ヘバーデン結節」が隠れた原因となり、足やひざ・股関節・腰・背骨・首などの慢性的な痛みや変形、疲労骨折(いつの間にか骨折)へとつながってしまい治らないことです。

イギリスの内科医「ヘバーデンさん」が名前の由来

「ヘバーデン結節」という名前は、この病気を初めて報告したイギリスの内科医「ヘバーデン医師」に由来します。
急性の場合は「腫れ(炎症)」とともに痛みがありますが、半年~1年ほどで自然とおさまります。しかし、それで安心していると、今度は他の指にも次々と同じような痛みと変形が起こる進行性の病気です。
赤い腫れを起こす「炎症期」や変形の初期には、多くのケースで痛みをともないますが、 医療機関でも様子を見ましょうと言われることが少なくありません。そのため放置してしまい、「指が横に曲がる」などの著しい変形へと重症化してしまうのです。こうなると、痛みや不便さだけでなく、見た目もだんだん悪くなり、人の視線が気になるようになります。
また、慢性的な場合はゆっくりと進行し、痛みも少なく、気が付かない人が多いのもこの病気の特徴です。同じように全身の関節にも起こり、これが隠れた原因となっています。

10年~15年ですべての指が変形してしまう

指が曲がるまでに症状が進行してしまうと、「草むしり」や「手を強く握ったとき」に強い痛みを感じるようになります。また、ものを取る時に食器や角などに指が当たってしまい、突き指状態(ねんざ)を繰り返し、激痛とともに変形が進行していきます。そして多くの場合、10年~15年ほどの間にすべての指が変形してしまうのです。
尚、炎症期には日常生活でも痛みがありますが、変形の進行に気付くのは痛みが治まった後です。つまり、「痛い時が曲がる時」なのです。 捻挫を繰り返している場合は、ヘバーデン結節の知識をもつ接骨院(整骨院)で治療をしてもらうことも有効です。

「ヘバーデン結節」の原因は?

「ヘバーデン結節」がどうして発症するのか、今のところ詳しい原因は分かっていません。母親や祖母が発症しているケースもありますが、遺伝的要因というよりは、体質が似ているからだと思われます。
また、膠原病(自己免疫疾患)とも言われています。「自己免疫疾患」とは免疫の仕組みの一部が壊れることで、自分の体を攻撃してしまう病気です。
また最近では、女性にこの病気が集中していることから、更年期症状のひとつ、女性ホルモン(エストロゲン)の減少が原因とも言われています。
しかし、女性ホルモン(エストロゲン)だけではヘバーデン結節が起こる人と起こらない人と に分かれますので、このことから推測すると、膠原病(自己免疫疾患)に「エストロゲンの受容体」が反応したことも考えられています。

「ヘバーデン結節」と「関節リウマチ」の違い

「ヘバーデン結節」を「関節リウマチ」と勘違いする人もいますが、リウマチは血液検査ですぐ分かりますし、本人もすでに自覚している場合がほとんどです。
また、第2関節が赤く腫れたり、太く変形したりする「ブシャール結節」という病気とも混同されがちです。  「ヘバーデン結節」と「関節リウマチ」と「ブシャール結節」も指の変形や痛みがあるため、しっかり区別する必要があります。

  • 【関節リウマチ】

    血液検査でわかる。手の指の付け根の関節や手首など大きな関節が変形するのが特徴。

  • 【ブシャール結節】

    手の「第2関節」が太く変形したり、痛むのが特徴。

  • 【ヘバーデン結節】

    血液検査ではわからない。手の指先「第1関節」が太くなったり、曲がったり、進行時期に痛むのが特徴。

「ヘバーデン結節」には治療法の基礎知識を知ることが必要

「ヘバーデン結節」には、手の指先「第一関節」を安静固定する「保存的療法」を最優先することが大切です。
特に、痛みがある時や急性期(炎症期/平均約3カ月間)に第1関節を安静固定すれば、炎症が早く治まり、痛みも消え、変形を最小限にくい止めることができます。予後の経過も良く、日常生活への支障を少なくすることができるのです。 変形は元には戻りませんが、それ以上ひどくさせないことが大切です。
安静固定の期間は、通常約3カ月の目安です。変形や痛みが激しい場合や、指先を使う頻度が高く、ねんざを繰り返した場合は、6か月ほどかかることもあります。
尚、安静固定といっても、一切動かせないわけではありません。台所仕事など日常生活に影響が少ないことが条件となります。

自分で改善できる方法

「へバーデン結節」は、治療法が確立されていないのが現状。そのため、発症した人のほとんどが適切な治療を受けられず、徐々に変形が進行してしまいます。まずは、自分で改善することを意識してみましょう。
「へバーデン結節」に有効なのは、「厚紙副子」とテーピングです。「副子」とは「添え木」の意味で、文字通り「厚紙による添え木」のことです。
通常の捻挫や骨折でも、ギプスや副木・添え木で固定をすれば、完全に治るという事実があります。「ヘバーデン結節」も、この原則に従うことが重要です。
複数の指先が同時に変形することが多いので、すべての指先に同時に使用できる薄さの厚紙副子(添え木)とテーピングが有効です。
尚、変形は元には戻りませんが、それ以上ひどくさせないことが大切です。
ここでは、「指先ヘバテープ」という専用テープがありますので、それを用いた方法をご紹介します。

ヘバーテープの機能

薄くて複数の指に対応でき、水仕事もできるので便利です。痛みが強い時や炎症期には、2枚を上下または左右から貼ることで固定力が増します。
いずれの方法でも、テープを貼った直後に患部が脈打つ現象が起こりますが、これは、テープの圧力に対する体の防御反応。5分ほどで体が安全と判断し、自然と消えますので心配はいりません。 強く巻かないことがテープを巻くポイントです。

  • 初期の急性期(炎症期)なら3か月くらいの使用目安です。

  • 症状が進行していて複数の指先が変形していたり、痛みがある場合はテープがきわめて薄いので複数の指であっても6か月くらいの使用目安です。

●痛みが強い場合は、2枚を使って上下からはさむようにして指先の安静固定をします。

① 通常の貼り方で「固定力パッド」が指の腹側にあたるように貼る。テープは一切引っ張らない。

② 次に、もう1枚のヘバテープを用いて、「固定力パッド」が指の背側に当たるように貼る(完成)。

●曲りなどの変形が著しい場合は、2枚を使って左右から挟むように固定します。

変形は残りますが、それ以上の悪化を防ぐことが出来ます。

  • ①「固定力パッド」を左右の片側の側面にあてて貼る。テープは一切引っ張らない。「固定力パッド」が指先の左右から挟むようにあてた状態で完成。

  • ②「固定力パッド」を左右どちらかの片側の側面にあてて貼る。テープは一切引っ張らない。

  • テープは薄いので日常生活への支障は少ないのですが、強く巻き過ぎると血行不良となり、危険です。巻く時は貼るように弱めに固定することが条件です。弱めに巻いても厚紙副子や添え木効果で固定力を維持することができます。

  • 「指先ヘバテープ」は2~3日目ごとに巻き替えてください。水仕事をする場合は昼間巻いて夜は外すを繰り返してください。

•これまでの治療法との違い

従来の治療法では、指先を専用の「シーネ(添え木)」や金属副子で安静固定させていました。しかしそれだと、固定材料が硬く大きすぎ、指の第2関節まで固定するため、指の運動が制限されてしまいます。極めて不便で、日常生活に支障があり、継続することが難しいという事実がありました。
特に、「ヘバーデン結節」のように複数の指先を同時に固定する必要がある場合はなおさらです。そのため、放置状態となってしまい、指先の痛みや変形を食い止められない場合が多かったのです。

•症状によって注射や手術が必要なケースもある

炎症期には、炎症や痛みをおさえる関節内ステロイド注射を打つ場合もあります。また、変形がひどい場合は、結節を切除する手術や、大きめの装具で固定する方法を検討します。
言うまでもなく、症状に不安を覚えたら、まずは医師への相談が必要です。

「ヘバーデン結節」に対するQ&A

ここでは、私がこれまでに「ヘバーデン結節」の患者さんから受けたいくつかの相談と、その回答を紹介します。ご自身の症状と同じものがあれば、ぜひ参考にしてください。

Q
10年患っている「ヘバーデン結節」を自分で治せますか?(51才 女性)
41才の時に、整形外科で「ヘバーデン結節」と診断されました。10年間様子を見てきましたが、両手の指それぞれ2~3本が変形し、だんだんひどくなるようです。接客業なのでお客様の前に手を出すのが気になり、今後どうしたらよいのかわかりません。仕事が忙しいので自分で治療できる方法はありますか?
A
保存療法を試してみて
「ヘバーデン結節」は、10年~15年ほどかけて両手の指すべてが変形することがあります。現在指の変形が2~3本ということは、まだ進行の途中であるとも考えられます。痛みが一旦治まり、また痛くなるなどの再発を繰り返していると、変形とともにコブが大きくなり、指先が横に曲がるなど見た目も損なわれてしまいます。接客業で客の目が気になるとのことですが、まずは保存的な治療を試してみましょう。
すでにお話した「厚紙副子」のテーピング法を試してください。お仕事が忙しいようなので、より簡単にできる「指先ヘバテープ」がおすすめです。薄くて複数の指に同時に使用でき、握ることもできるため、指を使う職業の人に向いています。
また、指先が横に曲がり、隣の指と擦れたり重なったりする場合は、専用テープを2枚使用し、厚紙副子の部分を左右から当て、安静固定を保つのも効果的です。
どうしても見た目にこだわるなら、手術で変形を矯正したり、コブを削ったりする方法もありますが、第1関節に運動制限が残ることが多くあるので注意が必要です。「ヘバーデン結節」の専門医のアドバイスを参考に、ご自身でもじっくり考えてみることです。

Q
進行を食い止めるにはどうすればいいですか?(38歳 女性)
30才を過ぎた頃から右手の小指が痛むことがあり、4年前からは薬指や中指にも同じような変形と痛みが出てきました。整形外科では、「ヘバーデン結節」は原因不明で治らないと言われています。1週間くらい痛み止めの薬を飲みましたが、「一時的に」ということなので今は飲んでいません。進行性ですべての指に広がると言われ、不安です。どうすれば進行を止めることができるのでしょうか。教えてください。
A
まずは安静固定、それから薬を試してみて
「ヘバーデン結節」の多くは40才以降の女性に集中していますが、30代で発症する人もいます。「老化」「草むしり」「水仕事」「手仕事が多い」「遺伝」などが原因と言われることもありますが、実際には原因不明です。個人的な考えとしては、女性特有の症状の一つで、膠原病(自己免疫疾患)、更年期障害の一つが関係していると考えています。
高齢になるにつれすべての指に広がるケースがよくありますが、片手だけ、あるいは両手で5~6本の指で止まることも少なくありません。進行を止めるには、何よりも指先の安静固定。まずは「厚紙副子」のテーピング法を最優先し、次に痛みや炎症を抑える薬で進行を止めたり、遅らせたりする方法が考えられます。専用テープを使用する方法も手軽なので、試してみてください。

Q
変形が進行し、お客さんの目が気になります(62歳 女性)
スーパーでレジ係を担当しています。4~5年前から右手の人差し指・薬指の第1関節の骨が太く膨らんで、少しずつ変形が進行しているようです。1年前からは、左手の小指や人差し指・中指にも同じような変形が見られ、最近は時々痛むようになってきました。どんな病気が考えられますか? お客さんに見られるのがとても気になり、どうすればよいのか迷っています。
A
第一関節の症状なら「ヘバーデン結節」の疑いが高い
手の指の変形には、第2関節が変形する「ブシャール結節」や、指の付け根の関節が変形する「関節リウマチ」もあります。ただし、第1関節だけが太く、盛り上がり変形しているので、「ヘバーデン結節」の疑いが濃厚です。まずは整形外科で診断してもらいましょう。
「ヘバーデン結節」は、できるだけ早く第1関節を安静固定することが大切です。痛くなり始めや変形の初期、つまり急性期・炎症期に第1関節を安静固定すれば、痛みがなくなり、それ以上進行するのを食い止めることができます。専用テープを使えば、それほど見た目を損なわずにレジ仕事をすることもできますので、ぜひ試してください。

Q
痛みと変形には手術をしたほうがよいでしょうか?(40代 女性)
1年前から手の指の第1関節が膨れ、水ぶくれのようなものがあり、最近は変形と痛みが起こるようになってきました。「ヘバーデン結節」と診断され、塗り薬をもらいましたが、ズキンズキンとした痛みがあり変形も進行しています。手術すれば治るのでしょうか? よい方法を教えてください。
A
後遺症の報告もある手術より、まずは安静固定
発症したばかりの時期は、関節が赤く腫れたり、水ぶくれ(粘液)ができたりすることがあり、この水ぶくれが他の指への感染原因という説もあります。最初は一つの指から発症して、5年以上経過すると複数の指に「ヘバーデン結節」が現れるのが特徴です。
大切なのは、気づいたらすぐに第1関節をテーピングや専用テープで安静固定することです。これまでの経験上、早めの安静固定で変形の進行が止まる場合が多いからです。手術には、「骨棘を切除する」「関節を切除し固定する」などの方法がありますが、指先が動かなくなったり、化膿、痺れなどの後遺症や再発に悩まされたりすることが多いという報告もあります。医師の指示を受けながら、自分で安静固定を試してみるのが懸命だと考えます。